2015年 10月 15日 ( 1 )

謎の連鎖

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「ヨコハマ買い出し紀行」には謎が多いと繰り返し申し上げておりますが、よく考えてみれば、これは読む方が問題にしているから「謎」なのであって、なんてことなしに読み流してしまえばほのぼのとした理想郷の生活が淡々と描かれている作品ということに・・・なりませんなぁ。そこここに謎の露頭のようなものが顔を出しており、真面目に読むなら必ずやそれに引っかかるはず。たぶんそうなるように描いているんですよ。

かつて、わたくしは「ヨコハマ買い出し紀行」で描かれる「夕凪の時代」の食生活は貧相だと書いたことがあります。ごちそうらしいごちそうが出てきませんからね。w
加工された食品というものの登場場面が少ない。「ところてん」をはじめとした、現代ではチープとされる食品ばかり。考えてみれば、あまり食費がかからないというロボットの人がヒロインなわけですから、主食については詳しく描かれてないのは当然ですな。

というわけで「夕凪の時代」の食糧事情についてなんですけれども、これがなんともこうだ!と言い辛いのでございます。
いくつかの断片的な情報を列記してみると

・米は味を忘れるほど貴重(アヤセ)
・巨大な栗
・巨大な柿
・巨大なヒマワリ
・桃は房状に生る
・梨もあるけど詳細は不明
・みかんは自家製らしい(大きさは普通)
・牛乳は手に入る(ただし必ずいつでもというほどはない)
・お酒も手に入る(種類不明のとか、ビールとか)
・味噌とか醤油もある
・ともうろこし(冷凍もある)
・超黒糖(南の産、沖縄?)
・じゃがいも
・玉ねぎ
・はばのり
・コーヒーは産地を選べるレベル(当然輸入品)
・お茶の類全盛
・たばこ
・菓子パン(焼きそばパンとコロッケパン)
・ピザ(宅配)
10/16追加:枝豆(意外に豆類は盛んに作られているかも)

キリがないのでこの辺で。w
温暖化して海面上昇しちゃった世界なわけですから、作物への影響もいろいろとあるはずです。まずは気候変動。海面が12-13mも上昇し、作中でも暑いということが強調されているので、個人の庭や畑でできるレベルの作物ならとにかく、食糧生産といった次元での農業については崩壊している可能性が高いです。気温が数度上がっただけで、単一の作物をとにかく大量に作るタイプの農業は大打撃のはずですから。
そうなると家畜の飼料についても現代と同じというわけにはいかず、畜産も大ダメージを被っているはず。つまり牛乳は貴重品。
そのような食糧事情の悪化による人口減少、いわゆる飢饉のようなものがあったとかそれが原因で戦乱が起きたとか、そういったわけであのように衰退しつつある世界なのだという説も十分説得力がありますね。わたくしはそれだけで種としての人間が衰退するとは思いませんけど。それにそもそものきっかけがなにかあったはず。

大体が「ところてん」の原料となる「寒天」の生産に差し支えが出るんですよ。>温暖化
寒くないと作れないんですから。それなのにアルファさんは「みつ豆でもなんでも良かったのに」などと言う。どちらかというと寒天は貴重品で、それのみで構成されている「ところてん」の方がより高級品だと思われ・・・この話題は前に書きましたなぁ。
ノスタルジックな雰囲気重視の展開でそういう情景とお店を描いたからなのでしょうけど、そこに突っ込むとこうなるというわけです。w

意図的に描いたとみられる米については、いろいろと想像を巡らすことができそうです。あの世界では米が主食ではなくなっているんですね。アヤセは直後にジャガイモを食べてましたから、人間の主食は芋類なのかもしれません。水稲は設備投資と手間がかかりますから、人の少ない「夕凪の時代」では多くは作れないのでしょう。それでも少しは作っているということではありますね。おそらく個人の田んぼで細々とという感じでしょう。
その反面、現代より麦茶が幅を利かせているように見えるところから、麦の作付けはそれなりに盛んなようです。ココネとシバちゃんがパンを食べている場面があるので、小麦は作っているのかな?
現代と同様に輸入かもしれませんね。

栗をはじめとする巨大な果樹の類については、それらが人為的なものなのか、自然発生的にそうなったのか、判断がつきません。耕地面積や従事する人の減少を補い収量を増やすために品種改良によって巨大化させたというのは考えられますけど、むさしのの国の街路樹が巨大なことから自然発生的に巨大化したとも考えられます。街路樹を品種改良して巨大化させても仕方ないですしね。同様に巨大化させるなら柿とか栗じゃなくて、もっとマシなもの、例えば「さつまいも」とかじゃないの?という気もします。
我々の年代では巨大化というと放射線の影響というイメージが強いのですけど・・・

「ヨコハマ買い出し紀行」が「ヨコハマ買い出し紀行」たる、第一の理由、アルファさんがヨコハマに買い出しにいく原因の一つであるところのコーヒー豆については、むさしの運送に就職したマッキが「フォルモサ」というコーヒー豆をお土産に持ってきているところから推測するに、少なくともアジア各国との貿易は行われている模様です。
「フォルモサ」は台湾のコーヒー豆で、現代の日本でもそんなにメジャーというわけでもない。わたしゃこのエピソード読んで飲んでみたくなったので台湾から直接買いましたよ。それをお土産にできるとは、マッキは何者?ということになりますね。w
ただし、ブラジルのコーヒーの産地で「フォルモサ」という町があり、「ヨコハマ買い出し紀行」の「フォルモサ」というコーヒー豆はそちらを指している可能性があります。謎を追求していたら謎が増えた。w
ブラジルと交易があるとすると、太平洋を横断することになりまして(マゼラン海峡経由?)、かなり大型の船舶でないと航海も大変ですし、経済的にも割に合いません。となると、それなりに大規模な貿易が行われている可能性がありまして・・・と謎が謎を呼び、どこまでいってもキリがありません。w

お酒はどうか。ココネはアルファさんに「カルーア」を贈りましたけど、あれも輸入品なのはもちろんです。「エンドレス町内会」ではアルファさんが酔っ払って舞ったりひっくり返ったりしてますけど、器は「猪口」です。「猪口」は日本酒を飲むためのものですから、あれは日本酒、つまり「お米の酒」ということになります。米は主食にならないほど珍しいのにお酒はできるの?という疑問が。w
お酒に近いものとして、味噌や醤油(器は貴重品らしいですけど。w)も手に入るらしいので、醸造業は存在するのでしょう。蒸留するお酒はあるのかな。焼酎とかは普通にありそうですね。

おじさんや子海石先生がなんとはなしに吸っている「たばこ」、これも日本国内だけではなかなか自給できそうにないもので、やはり海外からの輸入、ということで交易があるのは確かですね。

この通り、謎が謎を呼び、書いていてキリがないという。w
図は現代の普通の栗。いやこれは普通の栗というわけでもありません。「ぽろたん」という栗で、渋皮がなくて簡単に剥けるというのが特徴だそうです。これが高いんですよ。1kgで3,000円とかする。でも味と大きさは普通です。w
by namatee_namatee | 2015-10-15 21:25 | book | Comments(21)