崖の上

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久々に映画館に映画を観に行く。ものぐさなので映画はDVDやBDになってから観ることが多いもので、今までに映画館で観た映画って数えるほどしかありません。(汗
そういうわけなので、映画の批評でカンカンになって怒る人の心情が理解できなかったんですけど、最近になって映画館に行く機会が増えまして、その心情がなんとなくわかるようになりました。「お金出してこんな作品観るなんて!」という気持ちなんでしょうね。w

さて、本日観たのは図の通り「ハクソー・リッジ」でございます。
念のために申し上げておきますけど、これは上記の「お金出してこんな作品観るなんて!」という作品ではありません。投じた1,800円に見合った良い作品だと思います。
がしかし、わたくしの思っていた感じとは違いました。さすがにネタバレは申し訳ないので詳しくは書けませんけど、なんていうか「プライベートライアン」みたいな非情あるいは無情な戦争映画を想像していたんですけど、もっと人間ドラマの要素が強い感じ。わたくしの好みとは違ってましたねぇ。戦闘シーンもそんなにすごいとも思いませんし。
日本軍の描写について、なんとも微妙な線だったなぁと。個々の兵士は(士官も含めて)よくあるステレオタイプな描写ではあります。ただ、数の面でも個々の戦闘力でも強敵として描かれており、それはなかなかの見識かなとは思いました。もっとも、勝利した側が打ち負かした相手を実際より強敵だったと讃えることは多いので、その点は考慮しないとダメかもしれませんね。

史実における沖縄戦は、一般的な印象では「負け戦」(負けが決まっていた時期の戦いという意味で)とか「捨て石」とか、そういうネガティブなイメージ(いやまあ悲惨な戦いなので本質的にはネガティブなものでありますけれども。)があると思うんですけど、わたくしがこの「ハクソー・リッジ」を観るにあたってちょっとだけ調べてみた情報からの印象は、日本側はちゃんと沖縄の戦略的な価値を理解した上で、可能な限りの防戦を行った組織的な戦闘というもの。日本側は最終的に敗北しましたけど、いくつかの作戦上の過誤がなければ、さすがの米軍も一旦退退かざるをえなかった可能性があるんですよ。念入りに要塞化された沖縄の各地、優秀な指揮官と兵、文字どおり死ぬ気で突っ込んでくる特攻隊、これらの打撃力は米軍に相当な損害を与え続けており、特に海軍の損害は耐えられるレベルぎりぎりだったとのことです。一般的に「無駄」「無謀」と言われる特攻も、実際にはかなりの戦果をあげており、その点では無駄ではなかった。死んだ方が戻ってくるわけがありませんけど、無駄ではなかったといういうことで、ちょっとだけ救われた気になります。
この沖縄の激戦が後の展開にどういう影響があったのか、もし沖縄が持ちこたえていたら日本の講和に向けた交渉はどうなったのか、そういうことを考えると単純に「無駄な戦い」などということでは片付けられません。どうも世間一般に流布されている沖縄の戦いのイメージは冷静さを欠いて歪んでいるような気がしますねぇ。そういう話はわたくしのガラじゃないので踏み込む気はありませんけど。w

沖縄の方々には申し訳ないんですけど、あの位置に「沖縄」が存在する以上、なにをどうやっても戦略的な要衝という事実は変わりようがなく、米国相手でも他のどこかの国が相手でも同じように戦火に巻き込まれることは間違いないでしょう。基地があってもなくても変わらない。台湾も同様。そしてさらに視野を広げると、米国からみれば日本も太平洋の西の端にあるわけで、結局は同じような立場にあると思います。
前々から申し上げておりますけれど、人が死ぬということはそれが戦争でも交通事故でも悲惨で悲しいことです。そして不可避なことでもあります。せめてその死の理由を正しく理解することで、残された人の教訓となればと思うんですけど、どうもそういう風に考えない人々も多いようで(ry
この戦争の教訓は「次は負けない」あるいは「負ける戦いはしない」だと思うんですよね。それを回りくどく戦争そのものの否定から入ると余計ややこしくてわからなくなるんだと思います。「負けるとひどい目に遭う」、それで十分ですよ。w

「ハクソー・リッジ」はそういったことについては触れておりません。わたくしとしては小林源文先生の劇画みたいに凄惨な戦いを描いて欲しかったと思いますけど、一般受けはしないでしょうなぁ。

この作品、「崖」というか高い場所がポイントで、平和な時に兄弟や恋人と登る崖・高台と「前田高地」の崖が対になっているんでしょう。これはさすがと思いました。あとはMB(ジープ)は良い音出すなとか。w

by namatee_namatee | 2017-06-25 21:42 | diary? | Comments(2)
Commented by フラフープ at 2017-06-25 23:52 x
以前観た芝居には「特攻隊には、(たとえ一時的にせよ)高い戦果をあげておくことで、後に少しでも有利な講和条件を導くという意図もあった」と受け取れるシーンがありました。「特攻隊=無謀、無駄」というイメージを持っていた僕には、かなり新鮮な考え方でした。
ただ、特攻隊をいたずらに卑下するのは良くないとしても、正当化したがる人たちもいるんだろうなと思うと、素直に信じられませんでした。
上演場所が靖国神社、というのがまた。w
Commented by namatee_namatee at 2017-06-26 07:19
>フラフープさま
戦いの主導権を失ってからは講和の場に相手を引き出すために必要なもの、なんでしょうなぁ。>戦果
特攻隊だけじゃなくて戦闘は全てそういった意味あいを持っているもので、別に相手が絶滅するまで戦いを続けるわけじゃありません。そこら辺のイメージが間違っていると思うんですよ。>日本の一般的な戦争観
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