以前使った写真を再利用。w 「ヨコハマ買い出し紀行」の世界、全体に横溢する「諦観」が独特の味わいを生んでいるのには異論はありますまい。だがしかし、何について諦めているのかは明確に描かれてません。人類の行く末なのか、これまで歩んできた歴史なのか、一体なにに諦めたのか。誰が諦めているのか。雰囲気は確かにありますけど、全く具体的じゃないんですよね。>諦観 人類の未来を諦めるとか、個人としてそういうことを考える状況というのは考えづらいと思うんですよね。巨大な天変地異とか、世界戦争だとか、これまた世界的な経済危機とか、そういう要因による人類滅亡という状況なら、まず自分や家族の身が心配です。結末までの毎日を生きてくのが精一杯で、個人ではとてもじゃないけど人類全体の未来を憂える余裕などないはず。大体が話がでかすぎますよ。 そういうことは政治的に影響力のある地位の人があくまで仕事・使命として心配するもんじゃないでしょうか。そして人類はタフですから、ちょっとやそっとでは諦めそうにないんですよね。 で、「ヨコハマ買い出し紀行」の世界では政治的に影響力のある地位とか行政などのシステムは存在しない、もしくは極めて微力な存在になってしまっております。なので人類全体の未来が、などという悩み事をする人はもはやいないんじゃないかと。w そもそも日常生活には不都合はなさそうです。人口は減少しているんですけど、人間らしく生きて行く環境はまだ保たれている。少なくとも日本の各地では。 となると考えられるのは、人類の未来を憂えるような立場の人がいないということそのものが「諦観」の正体のような気もします。 それだけじゃなんなので、具体的に諦めている人は誰かと考えてみました。 子海石先生とおじさんは諦めてそう。いろいろ事情を知ってそうですからねぇ。もっとも「ヨコハマ買い出し紀行」の全ての登場人物はあの世界がなぜああなったのかの原因を知っているはず。知らないのは我々だけなんですよね。子海石先生とおじさんはさらに込み入ったことを知っているはず。 町内会のメンバーはどうか。すでに諦めきって町内会(飲み会)に精を出しているのかもしれませんし、あまり深く考えてないのかもしれません。ただし、前述の通り、人類がこのような状況に陥った原因はみんな知っています。 ココネはどうか。ロボットの人のココネは諦めるというか、人類じゃないのでそもそも関係ないともいえます。もっとも友人のシバちゃんとか、自分の生きている社会の行く末は心配しているでしょう。どちらかというと、やっぱり人類がどうなるのかとかは気にしてないように見えます。毎日、普通に変わりなく生きている。寿命が違うのでそうせざるをえないとも。それが間接的ながら「諦観」を醸しだしているといえばそうかも、といった印象。ロボットの人のことについては諦めるどころか、マニアックな興味をもっているはず。 マルコは・・・やっぱりロボットの人に直接「諦観」は感じづらいなぁ。w ただ、ロボットの人という存在そのものが物悲しいといえば物悲しいのではありますけれども。 主役のアルファさんはどうか。ある意味、一番「諦観」を感じさせるのがアルファさんかもしれません。無邪気にその日その日を生きているだけに見えますけど、容赦なく迫ってくる身近な人の年を取っていく様とか、成長して去っていく友人とか、オーナーからの連絡を待ち続けることとか、諦めなければならないことが具体的に描かれていますから。そういうことが実は登場人物それぞれにあるとすれば、確かに「諦観」はそんなところに在ると言えるかもしれません。 ・・・やっぱりこのテーマは難しいなぁ。雰囲気ですからね。具体的になにかと指摘できるものじゃないですなぁ。アルファさんを描いた芦奈野先生の表現が巧みで「諦観」があるように感じるといったところが近いかも。 図は小説版「ヨコハマ買い出し紀行」のオメガくん。オーナー?の宇布美もオメガくんもいろいろと諦めちゃいません。宇布美は最後まで人類の生き残りと連絡を保とうとしてますし、オメガくんもアルファさんに逢いたいために数百キロを歩いて旅をするぐらいですから。まだまだやる気まんまんですよ。w
by namatee_namatee
| 2016-05-18 22:45
| diary?
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Comments(11)
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colonel-mogy0079 at 2016-05-18 23:03
なんというか、
もう発展拡大することはない世界に、 なんとなく終演に向かって、生きている感じがありますね。 当時はとくに、なんとも言えないさみしや一抹の怖さを感じながら読んでたような。 でも、アルファさんは可愛い。 別件ですが、公開録音のチケットメール来ましたか?まだ来ないのですこし、不安になります。
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namatee_namatee at 2016-05-19 11:28
>colonel-mogy0079さま
特に明言というか、アピールしているわけじゃないんですけど、明らかに終末に向かっているというのがわかること。これが「ヨコハマ買い出し紀行」の虚無感とか寂寥感の大元だと思います。 なぜそんなものをマンガで表現しようと思ったのか、そこにも興味がありますね。 ただ人によってはあの世界を理想郷ととらえる向きもあると聞きます。わからないではないんですけど、やっぱりちょっと違うなと思うし、なぜ理想郷と思うのか、その理由も知りたいような気がしますね。 >チケボ そういえばメール来てません。今晩あたりでしょうか。
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シロ
at 2016-05-20 18:36
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namatee_namatee at 2016-05-20 22:58
>シロさま
そういうなにか足掻いたことって具体的にはほとんど描かれていないんですよね。>ヨコハマ買い出し紀行 ココネが眺めていたロボットの碑ぐらいがかろうじてそれを匂わすのみ。 それでいて、読んだ人はみんなもれなく終末とか諦観とか、物寂しい感じを受けるというのが不思議だと思います。
■ なまさん(1/2)
★(たしか)太宰治の言葉で、だいたい以下のような意味なのですが、 『本物のあきらめに至った人は、嘆かない。 そこにあるのは、穏やかなほほえみだけである』というものがあります。(^^ (これは心理学的にも正しい見解です。 怒りや悲しみは、可能性に対して発生する感情で、 本物の絶望の前には、人はもうそれを感じることは無くなってしまうものなのです) 「夕凪の時代」はそうした、やるべきことをやり終えて老い先を自覚した老人のような、 (ある意味 良いかたちの)諦観が自然な空気として存在する世の中のように感じています。 そうしたものが当たり前に流れている世の中(それだけ長い時間が経っているのでしょう) だからこそ、タカヒロたちも過度な絶望感にとらわれず、 「生きれるだけ生きていこう」といったスタンスで日々を過ごしているのだと思います。 その意味で、非常に「写実的」な作品と呼べるかもしれません。 ★また、なぜ 芦奈野先生がそうした世界を描こうと考えられたかについては、 「老い先短いからこそ、今の1日1日を濃密に感じて生きていける世界」 を設定したかったからではないでしょうか? 未来ばかりに頭がとらわれると、「今この瞬間」を軽視してしまうものです。 しかし、芦奈野先生が大事にしたかったのは、 『今この瞬間の、身近で小さな幸せ』だったように思うのです。 登場人物たちから未来を奪うことで、相対的に「かぎりある今」に意識が行くようにし、 作中の「身近な小さな幸せ」を際立たせ、読者に提供したのではないかと思うのです。(^^
■ なまさん(2/2)
> 人によってはあの世界を理想郷ととらえる向きもあると聞きます 作品全体の諦観の空気が、作品社会から「目先の損得」を排除しているので、 逆に現実の世界でそうしたものに振り回されている人々の目には 『理想郷』として映るのかもしれませんね。 ただ僕は、そういう考え(ヨコハマ=理想郷)はあまり好きではありません。 生物にとっての最大の幸福は、 「自分のDNAを、次代により高い確率で受け継ぐこと」です。 それが「個人レベルで」許されなくなったような世界は、 (唯一 ターポンだけが「可能性」を残すのみです) どんなに穏やかに描かれていても、結局は「地獄」だと思うからです。 > にか足掻いたことって具体的にはほとんど描かれていないんですよね ~ > それでいて、読んだ人はみんなもれなく終末とか諦観とか、 > 物寂しい感じを受けるというのが不思議だと思います。 「過程が描かれない」(結果しか描かれていない)からこそ、 「諦観」を感じるのではないでしょうか? 「きっと今まで、語りつくせないような様々な「足掻き」の果てに、 こんな不思議で穏やかな空気が生まれたのだろうな…」 と、 読者が自然に想像するように、意図的に言及をさけたのだと思います(^^
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namatee_namatee at 2016-05-22 16:46
>ふきさま
こんな生煮えのネタに、レスをいただくとは申し訳ないような。(汗 ほとんどおっしゃっていることに同意です。 わたくしがちょっと解釈に迷うところは、「ロボットの人」に未来があるようなないような、やや、ほんのわずかに希望を持たせているような描き方をしていることを感じるところです。人類は諦め、その生存・存在した痕跡の表現をロボットの人に託す、この流れは理解しておりますけど、それにしちゃその後の展開に妙に気を持たせるような感があって、ただ滅びに根付いた諦観を描くのならば、そこはドライにというか想定してなかったアルファさんやココネの変化など盛り込まずに、あくまで人工物としての概念の範囲で「ロボットの人」のアルファさんからみた世界を描けばよかったんじゃないかなぁ、と。 作品の演出上の都合であろうというのは理解しておりますけど、それでも妙にロボットの人の未来に気を持たせる感じで、それがまた「理想郷」と捉えてしまう人を生む遠因なのではないかなどと思ってしまいます。 まあそれでも、生物的な起源を持たず、次世代に自らの特質を伝えていくことができないというロボットの人を登場させることで、無常とか諦観とかを表現しているというのはその通りだと感じます。 作品の味わいにまで踏み込んで考えることになるとは、出会った時には想像しなかったですよ。(汗
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シロ
at 2016-05-23 19:27
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namatee_namatee at 2016-05-23 20:48
>シロさま
ひどい話ですけど、「ヨコハマ買い出し紀行」に子供が全く登場しなかったら、もっと話は簡単だったろうなぁと思います。
■ なまさん
> こんな生煮えのネタに、レスをいただくとは 自分も当初は、『このエントリは、なまさんがときどき書かれる、 「まだ自分の中では答えに至っていないけれど、とりあえず疑問を書き残しておく」 タイプのもののようだから、コメントは控えておこう』と思っていたのですが、 なまさんと何人かの方とのコメントのやり取りを読んで、 「この疑問、うまくまとめられるかもしれない」と思いなおし、 コメントした次第です(笑) > ただ滅びに根付いた諦観を描くのならば、そこはドライにというか > 想定してなかったアルファさんやココネの変化など盛り込まずに、 > あくまで人工物としての概念の範囲で「ロボットの人」のアルファさんからみた > 世界を描けばよかったんじゃないかなぁ、と。 僕はこれについては、おそらく以下の2つの理由があったのではないかと見ています。 1つは、芦奈野先生ご本人か編集者が、 「単に滅びゆく世界をそのまま描くと、読者の中にも陰鬱な気持ちしか残らず、 連載も難しくなるので、割り切ってドーンと「萌え要素」を入れてしまおう」といった 『商品価値・サービス』に対する冷静な視点があったのではないか…? という点。 そしてもう1つは、同じく芦奈野先生ご本人か編集者に、 『連載を続けていく中で、キャラへの愛着が生まれて』、 「できればこの子たちに(可能な範囲で)幸せな結末が訪れてほしい」 といった思いから、作品としての整合性を多少崩しても、 そうした未来を予感させる描き方をしたのではないか…? という点です。 本気度の高いクリエイターにとって、制作物は「我が子」です。 その思いが「ヨコハマ」に、単なる滅亡モノにはない 「どこか あたたかい空気」を生んだのではないでしょうか? 「サエッタの誕生」も、同じ理由によるものではないかと見ています(^^
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namatee_namatee at 2016-05-24 16:36
>ふきさま
これは恐れ入りました。orz そうなんです、このエントリーはなんとなく思ったことを忘れないように書きのこしておこうとしたものでした。いやまあ、意見をいただければそれも助かります、ぐらいの淡い期待がなかったこともありません。w 言われてみれば普通の漫画雑誌?に連載されていた作品ですもの、なんていうかふきさんがおっしゃるようなソフトな面があってもおかしくないですね。考え過ぎて突き詰めてしまうとロクなことはないですね。(汗
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