侘び寂び

侘び寂び_c0019089_2032573.jpg

ほぼ1年前のエントリーの続き。

これがそのシーン。
まずこちらをどうぞ。「ヨコハマ買い出し紀行」新装版第8巻第100話「ふたり」をネタにしたエントリー。書いてある通り、全てカラーでセリフがありません。すごいよな。(汗
このエントリーで強烈と言っているのが今回の画像です。左の上のカットですね。窓の破れた車と錆び付いているであろう三輪車。そして遠くに見える廃屋。そこを一人歩くアルファさん。これがたまりません。心にぐっさりきます。orz

なんていうか、のんびりと住み心地が良さそうに見える「夕凪の世界」の過酷な現実が垣間見えるんですよね。数キロ四方、下手すると数十キロ四方に人間は数えるほどしか居ない。これが人間の手の入っていない山の中とか、砂漠の真ん中とかならまだしも、かつて人が居た景色ですからね。よりいっそう寂しさが際立つのでございます。侘び寂びをマンガで現すとすると「ヨコハマ買い出し紀行」はかなり高得点だと思いますよ。

そしてその寂しい景色の中で唯一動いているのはみなさんご存知の明るい、しかもハイテクの頂点、ロボットの人のアルファさんという対比がまた。なんでこんな表現が出来るんですかね。>芦奈野先生

そして左下のカットのアルファさんの表情の解釈が難しい。寂しげにも見えるけど、特になにも考えず無表情にも感じられる。どっちでしょうね。
アルファさんに寂しいという感情があるのかどうか。三浦半島のさきっちょで一人で喫茶店を営み、3日に1人ぐらいしかお客さんが来ない。だいたい来る奴来る奴「ごぶさた!」と言いながら入ってくるぐらいですからね。ずっとそういう環境に居るアラファさんに今の状況が寂しいという認識があるのかどうかですね。
もう一つ別な見方として、見た目は人間みたいだし、人格も感情も備わっているようですが、やっぱりロボットの人ですので人間と全く同じではありませんからね。オーナーが旅に出るときに「一緒に行くか?」と聞かれて明るく「行かない。」と答えるぐらいなので、その時点では寂しいとか、そういう想像力自体が備わっていなかった可能性があります。

だがしかし、あの「にぎやかな時も ひとりの時も みんな好き」というセリフ、つまり第1話「鋼の香る夜」の頃には少しは世界が広がり、置かれている状況に自分は好き嫌いがあるということを認識しているようです。
そしてはるか後、130話「月の輪」になると「今は一人じゃない時の方が好き」と言ってます。この「月の輪」でおじさんが言う通り、やっぱりアルファさんは成長しているんですね。他にもいろいろテーマはあるんでしょうけど、この肉体的には変化がないロボットの人のアルファさんが精神的に健やかに成長していく様子こそが、「ヨコハマ買い出し紀行」のメインテーマだと思いますね。

おそらく第100話「ふたり」の時点でアルファさんは寂しいという感情はあると思います。このシーンの後、アルファさんは打ち捨てられたように見えてもまだ生きている自販機を見つけて缶コーヒーを飲むんです。そして、このお話のラストのシーンでちょっと離れたところから自販機の灯りを見つめるアルファさんの表情がなんとなく思うところがあるように見えるんですよ。やっぱり自分以外に動いているものが居て、ほっとしているんだろうなぁ、って。

第1話「鋼の香る夜」と130話「月の輪」はいわば対になっているようなお話です。「月の輪」は再建なったカフェアルファのテラスでおじさんとアルファさんが文字通り月の輪について話をするお話なんですが、第1話「鋼の香る夜」もカフェアルファのテラスが舞台ですからね。
そして「鋼の香る夜」ではタカヒロが初登場するんですが、対照的に「月の輪」では会話の中に出てくるのみってのが、また。

そうやって精神的に成長して「寂しい」のが嫌だというアルファさんに対して、周囲の人間はどんどん居なくなっていく、その対比が「夕凪の世界」の現実を突きつけるのだ。
そしてココネの存在がとても重要になってくる。だから第140話最終回「ヨコハマ買い出し紀行」のラストはあれで良いんですよ。あれ以外の落とし方はないのです。
by namatee_namatee | 2014-07-01 21:46 | diary? | Comments(5)
Commented by フラフープ at 2014-07-02 20:14 x
「いつか会えたら」の中に「一人はそろそろ飽きたみたい」という歌詞がありますが、「鋼の香る夜」の台詞と相容れない部分がある、ということでしたね。しかし、その後の展開を考え合わせれば、かなりハマるのでは?
Commented by namatee_namatee at 2014-07-02 22:43
>フラフープさま
拘りますね。w
「いつか会えたら」の場合は歌詞全体のストーリーから、どちらかというと恋人を慕っているように感じるんですよ。で、アルファさんにそういう機能はないとまでは言いませんが、あまり感じられないです。だから「いつか会えたら」は良い歌ですが、「ヨコハマ買い出し紀行」のファンとしては、ちょっとストーリーの解釈が違うかな、と思うんです。

確かにアルファさんは一人で寂しいとは感じるのかもしれませんが、それは男女の寂しさではなく、友人もしくは家族、あるいは人そのものが居ない寂しさのことだと思います。
Commented by フラフープ at 2014-07-03 08:46 x
歌詞から読み取れるストーリーの解釈が、僕とnamateeさんで少し違っているようです。今後も精進します。

Commented by namatee_namatee at 2014-07-03 12:31
>フラフープさま
楽曲の作られた時期とストーリーの展開の時期がずれてますから、解釈がちがっても問題とは思えません。わたくしはイメージソングとしてとらえておりますね。>いつか会えたら

楽曲自体は悪くないですし、多くない椎名さんのアニソン・キャラソンなのであまり深く考えてこなかったんですが、フラフープさんの説を聞いてわたくしもちょっと真剣に精進してみたいと思います。w
Commented by フラフープ at 2014-07-15 20:53 x
よく見たら、ヨコハマのタグでは、記念すべき100回目のエントリーじゃないですか。おめでとうございます!3ケタですよ?アルファさんアルファさんと、100回も!w
名前
URL
削除用パスワード


<< リアル椎名さん。w お気に入り(定時報告) >>