最後の登場人物

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この藍色の髪の男の子は誰かというと、小説版「ヨコハマ買い出し紀行」の主役、オメガくんです。

問題作
「ヨコハマ買い出し紀行」的には問題作でしょうなぁ。>小説版

いまさらネタバレがどうのということもないでしょうから、ざっくりと内容を書いちゃいますと。
この小説「ヨコハマ買い出し紀行」で描かれるのは「夕凪の時代」から相当に時間が経った「人の夜」のお話。作者の解釈では「人の夜」は人間がほとんど居ない不毛の世界という。このお話はその世界にたった二人だけ人間とロボットが生存しているという設定で始まります。なので正確には人間は1人だけだな。その人物は宇布美という。優秀なエンジニアらしく、ロボットの人を作ることが出来るらしい。そのロボットがオメガくん。

宇布美はアル中で死んじゃう。もともとは優しい男だったらしいんですが、人間がどんどん居なくなって行く世界に絶望したのか、精神を病み、自分の作り出した究極のロボットのオメガに当たり散らして暮らしていました。そして、ついに本当にこの世界に人間は自分一人ということが確実になった時、わざとか偶然か、東の「かながわの国」と呼ばれたところに、コーヒーの実から特別な方法で飲み物を作って旅人をもてなすロボットが居るという話をオメガにした夜に亡くなってしまいます。
ちなみにこの世界ではコーヒーはそこら中にあって、その実は食用となっておりますが、現代のようにコーヒーとして飲用されてはいない、もしくはその方法は失われているという設定。

宇布美がオメガに託した望みはひとつだけ。自分が死んだら丘の上に埋めてくれと。あとはどこへでも好きなところへ行けという。意地悪で横暴でしたが、それでも優しかった頃を知っているし、最低限の世話はしてくれていた、いわば父親のような存在の字布見が急に居なくなってしまって、オメガくんは困っちゃいます。で、最後に聞いた東の「かながわの国」に居るというロボットの人を訪ねて旅に出る・・・

もちろん、「かながわの国」のロボットの人、コーヒーの実から特別な方法で飲み物を作って旅人をもてなすロボットとはアルファさんに他なりません。w
宇布美とオメガが住んでいたのはハママツ。オメガくんはそこから歩いて三浦半島を目指します。数ヶ月の旅の末、ついにカフェアルファを見つける。もっともこのカフェアルファは「ヨコハマ買い出し紀行」原作のあのカフェアルファではなく、おじさんのガソリンスタンド跡地にあるんですけどね。オリジナルのカフェアルファは浸食で海に飲まれたという。
カフェアルファのカウンターにはアルファさんが居る。ついに見つけた!自分以外のロボットの人に会えた!と思ったのもつかの間、アルファさんはすでに動かなくなっていた・・・

というのが、このお話の始まりです。
この時点ですでに異議がありますよ。「人の夜」がそんな殺伐とした時代かどうか。「ヨコハマ買い出し紀行」の原作の最終話は「のちに夕凪の時代と呼ばれるてろてろの時間 つかの間のひととき ご案内しましょう 夜が来る前に まだあったかいコンクリートにすわって 人の夜が安らかな時代でありますように」という、こうやって書いているだけで泣きそうになる、おそらくアルファさんのセリフで終るんですが、それから想うに「人の夜」がそんな絶望的な時代とは思えません。また、「夕凪の時代」の人々の暮らしようから見ても、そういう殺伐として救いの無い終り方をするとは思えないんですよ。
なんといってもロボットの人がいますからね。わたくしたちのような普通の人間という存在は滅びてしまっても、次世代の人間とおもわれるロボットの人は相当な数がいるはずで、彼ら彼女らがわたくしたちの人間の生活を続けてくれるはずです。人間という存在がこの世にあったことを後の世に残すことこそが、ロボットの人の存在理由であるというのが持論のわたくしとしては、この小説版のような世界観は受け入れられません。

この小説版ではロボットの人はオメガを除くとアルファさんしか居ないことになってます。ココネもマルコもナイも居ないんですよ。あ、ターポンのアルファさんは居るか。なので地上にいるのはアルファさんだけということになりますね。そしてアルファさんは自分では意識してませんが、周りの人の想いを感じ取って記録するという機能がある。これが重要なポイント。
カフェアルファに辿り着いたオメガは動かなくなったアルファさんを見て絶望しますが、アルファさんの記憶にアクセスしようとする。そういうことをするってのは、もうあれしかありませんよ。w
・・・オメガはアルファさんに口づけをする。>ごるぁ。(怒

そして読み出した記憶を綴って行くのがこの物語、というわけです。その内容は原作のエピソードを少しアレンジしたもので、基本的に目新しいものでもない。落雷の話とかタカヒロとのこととか。原作にない重要な話としては子海石先生とのふれ合いがより細かく描かれており、その中でオーナーの初瀬野先生のキャラクターについてちょっと触れていること。だがしかし、あまり良い描かれ方ではないんですよ。>オーナー
ロボットの人は人間の欠損した器官を補うためにも作られたということになってまして、初瀬野先生は必要なら(人間並の知能を持つM7を作るために)ばロボットの人を切った貼ったすることも辞さない人という。それは無いわ。(怒
最初はろくに話もできなかったはずのアルファさんをあんなに魅力的な人にまで育てたオーナーが、そんな人間であるはずが無いというのがわたくしの考えで、この小説の設定は全く受け入れがたい。この時点で小説版は評価に価しないと言っても良いんですが・・・
あと子海石先生とおじさんの亡くなる様子も描かれてます。これはまあ予想の範囲内で、納得いく描写ですね。

このまま行くと作者ふざけんな、こんな本をオフィシャルな小説版にしやがった講談社の責任者でて来い!となるわけですが、最後にちょっと粋なエピソードで終ることでなんとか「ヨコハマ買い出し紀行」ファンが暴動を起こさないで済んでいる。w

・・・アルファさんが生き返るんですよ。動かなくなっていたのはラップトップのスリープみたいなもんで、必要ない時は機能を停止してエネルギーの消費を抑え寿命を延ばすという仕組みだそうです。前述の通りこの展開は酷い話だと思って読みながらも、アルファさんが復活するときはやっぱり心が躍ってしまう。そして復活したアルファさんとオメガは「みちのくの国」へ旅に出ることにするんですが、その前にオメガは宇布美をちゃんと弔おうと一度ハママツに戻ることにする。
ここでハママツに行ったきり帰ってこなかったタカヒロの記憶の対比でオメガは「僕は行ったきりになったりしない。・・・ちゃんと帰ってくるよ」とアルファさんに言います。

この言葉をもって、わたくしはオメガを「ヨコハマ買い出し紀行」最後の登場人物として認めます。
by namatee_namatee | 2013-12-11 22:14 | book | Comments(4)
Commented by 孫彰 at 2013-12-11 22:43 x
面白いです。

あと、まるで関係ありませんが1月4日の渋谷ライプ後半だけの予定でしたが両方行くことにしました。どうせ渋谷までいくのに半分だけじゃ半端ですからね(汗)
Commented by くみちょ at 2013-12-12 08:11 x
ヨコハマ買い出し紀行はラジオで聴いて、コミックを少し買ったぐらいでしたが、小説も発売されていたのですね。知らなかったです。
しかもこんなラストだったとは・・・
Commented by namatee_namatee at 2013-12-12 09:55
>孫彰さま
小説版は非常に評価が難しいです。orz
半分だけ行くやつなんていないって書いちゃって申し訳ありません。w>新年ライブ
Commented by namatee_namatee at 2013-12-12 10:01
>くみちょさま
小説版は非常に評価が(ry
すごくマイナーなはずです。>小説版
確か2008年ぐらいに出て重刷もされなかったはずですので、もう滅多に見かけることはないですね。某オークションなどで高値で取引されていますが、内容が内容なので無理に手に入れても後悔するかも。(汗

ラストというか、世界観自体を受け入れないというのが大半の「ヨコハマ買い出し紀行」ファンの意見のように思います。
オメガとタカヒロを対称に対比させているところとか、なかなか面白いんですが、それにしてももう少しやりようがあるんじゃないかなぁ、と。
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