寂寥感あり過ぎ

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「カブのイサキ」第6巻第45話「海じいさん」より。

芦奈野先生の代表作は勿論「ヨコハマ買い出し紀行」です。
異論の余地無し。あの話は一見ほのぼの癒し系に見えて、その実すごくハードなSFです。そして、ざっと読んだだけでは気がつかない寂しさがそちこちに溢れている。
アルファさんは一見のんびり暮らしているように描かれてますが、ちょっと想像を巡らせてみればわかること、つまり数キロ四方、下手すると数十キロ四方に人っ子一人居ないとてつもない田舎で、いつ来るかわからないお客さんとこれまた帰ってくるのか来ないのか見当もつかないオーナーを待ちながら一日一日を暮らしているということ。エピソードをマンガにしているからそれなりに変化があるように見えますが、実際の「ヨコハマ買い出し紀行」の世界ではなにも無い一日の積み重ねが延々と続いているんですよ。おまけに最終巻では50年ぐらい時が経っているという。

歳を取らず死ぬことも無いロボットの人ですが、機能は人間と同じですから、当然心もある。オーナーはそんなアルファさんを見て、なんていうか、大変な物を作り出してしまったという、どうしようもない罪の意識のようなものを感じて、どこかへ行っちゃったんじゃないかと思いますね。
でも肉体的には変化の無いロボットの人ですが、人間と一緒に暮らしていくうちに心は成長していく。子海石先生もオーナーも予想できなかった心の成長を遂げたアルファさんに読者は救いを感じるのだ。それがなかったらあんな切ない話、やりきれませんよ。w

で、「カブのイサキ」ですが、これは残念ながらそういう味わい深さは希薄。ただ、表現については「ヨコハマ買い出し紀行」より洗練されている面がありまして、写真のように海辺の寂しい風景の描写はなかなかのもの。裏も表もなくただ人気の無い寂しい風景なだけなんですけどね。いや裏はあるか。伊豆が見えるか見えないかとか。タイトルの「海じいさん」とか。残念ながらそれらの謎は語られることなく終ってしまいましたけど。

久々に読み返して見ると、これはこれで良い作品なんじゃないかなとは思います。傑作とは言えないけど。もっとぶっ飛んだ飛行機を登場させるとか、なにか刺激が欲しいかなぁ。あと最後が早足過ぎるんですよね。打ち切りらしいので仕方ないですけどね。ただ、全編に描かれるこの寂しい感じは芦奈野先生ならでは。

・・・ここで「ヨコハマ買い出し紀行」の14巻を読んでみたら、比べ物にならない、とてつもない寂寥感に打ちのめされました。139話のアルファさんのセリフ「オーナー 見てくれてますか」とか、もう死にそう。orz
by namatee_namatee | 2013-09-25 21:21 | book | Comments(2)
Commented by & at 2013-09-25 23:26 x
何日か前に(まだ残ってるかも)ニュー速かケンモウに「読んでないと人生半分くらい損してるって漫画」みたいなスレでいくつかヨコハマというレスがありました。
けっこうアングラでは支持されてたんですかね?
実はなんか恐ろしくて最終巻はまだ読んでおりません。
Commented by namatee_namatee at 2013-09-26 09:32
>&さま
アングラじゃないって。w
連載当時はそれなりにメジャーだったんですよ。たぶん。

恐ろしくないよ。>最終巻
広げきった風呂敷について何も説明せず放りっぱなしで終わるにもかかわらず、万人が納得するという極めて異例なお話。
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